最高裁判所第二小法廷 昭和28年(し)5号 決定 1953年7月13日
本籍
奈良県宇智郡野原町大字下牧二〇七三番地
住居
同県南葛城郡大正村大字西松本三〇一番地
申立人(被告人)
東ハルノ
右申立人の食糧管理法違反被告事件について、昭和二六年七月一八日奈良地方裁判所葛城支部のした刑の執行猶予言渡取消決定に対する抗告事件につき、昭和二六年九月二九日大阪高等裁判所のした抗告棄却の決定に対し、申立人から特別抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件特別抗告を棄却する。
理由
被告人の特別抗告理由の一について、
本件取消請求の対象は、昭和二四年二月二六日大阪地方裁判所が被告人に対し判決を以つてなした懲役刑執行猶予の言渡であつて、右判決には何ら所論のような違法はなく、固より無効ではない。従つて、所論違憲論は既にその前提において失当である。
同二について、
原決定には、憲法三七条三項の保障は公判手続においてのみ与えられているにすぎないというような判断は含まれていない。(なお、刑の執行猶予取消請求事件において、所論のような弁護人選任等の告知をする必要のないことは原決定の説示するとおりであるばかりでなく、公判手続においてすら、右の告知をしなかつたからといつて、憲法三七条三項に違反するものでないことは当裁判所の判例とするところである。昭和二五年(あ)第二一五三号昭和二八年四月一日大法廷判決参照)。従つて、論旨は採用することができない。
よつて、刑訴四三四条四二六条一項に則り全裁判官一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)